黒磯
鈍行に乗っていると、黒磯駅(栃木県)が東北と関東の電車的境界らしく、ここから東北本線に乗り換えることになる。逆側は宇都宮線系統の上野東京ラインに乗れば熱海の方まで一本で行けるようだ。
福島から熱海まで乗り換え一回で辿り着けるというのはなんとなく驚きだ。
そんな黒磯駅で乗り換え時間が30分あったので、少し写真を撮った。
東北本線にありがちな、まったり感。
基本的に静かで、まばらな高校生の声が聞こえる。
薄曇りの日の田舎駅は他には無い静謐な虚無感を与えてくる。
そんなホームに、突如として存在する立派な扉。
違和感MAXである。
Wikipediaによると、黒磯駅はかつて皇族が那須御用邸に行く際に降車していた駅とのこと(現在は東北新幹線那須塩原駅で降りているらしい)。おそらくこの扉が皇族専用改札(?)なのだろう。
同じような扉が外にもある。
扉と扉の間の空間がどうなっているのかは若干気になるが、明らかに立ち入り禁止オーラが出ている。
ちなみにノーマル改札の横には不思議なモニュメントがあった。
パッと見、ソバ屋の出前である。
近くの和菓子屋でザクロはちみつを買った。はちみつはよく食べるものの、ちょうどなくなりかけていたのでちょうど良かった。
店内には和菓子だけでなく、木彫り板や細工品、湯のみなどの工芸品も置いてあった。
乗り換え時間30分ではあまり遠くまで行けなかったが、駅ホームの看板を見る限り、見所自体は色々あるらしい。
時間があるときに色々行ってみるのもいいかもしれないと思った。
ちなみに、いかにも田舎っぽいが、駅構内はちゃんとLTEが入った。
また、黒磯から東北本線に乗っていると、泉崎や矢吹、鏡石、須賀川といった駅がある。地図や書類上では泉崎村、矢吹町、鏡石町、須賀川市は良く見ていたが、実際に「ある」というのが、どうにも不思議な感じがしてしまう。
手を動かして触れてみたことのあるもの以外、どんなに勉強しても頭の中の知識が現実に関係あるのだという実感を掴むのは難しい。
例えば、私の場合、化学は少しはやったから、スキームを見れば実際の実験状況や手順、どんな感じでモノが取れるか、何でどのくらい測定したか、裏にどんな実験や測定が没になったか、どこの研究室の流れっぽいか、などが(正しいかはわからないが)具体的に想像される。
しかし、このような地名を聞いても、平面地図上の位置と、場所によっては産業や人口などのデータを思い出すだけで、実際の感覚はまるでない。
地域に心を配っていて化学はやっていない人は逆だろう。
いわゆる教養とはなんなんだろうか。
触れたことがなく、理解もしていないのに、知っている、といって話を合わせたり、知識持ってるアピールすることに意味はあるのだろうか。
ちなみに現実の泉崎駅は田んぼだらけだったが、矢吹駅と鏡石駅周辺は住宅地も多く栄えているように見えた。須賀川駅は遠くにビルも多く見えて、村と町と市とはこういうことなのかなぁと素人目に感じた。
ここで例えば先ほどの反論として、どこが村でどこが町なのかという知識すら無ければこういう感想も出てこないから、最低限の教養は必要だ、とも考えられる。もっと深い知識があれば、より有意義な考察をしながら駅を通過できたのかもしれない。
しかし、それらはただ色眼鏡を通して、勝手に何か考えているだけにも思える。
実感が存在しないことに変わりはないのだから。
黒磯福島間はおよそ2時間ほどかかる。
家で無為に過ごす2時間より長く感じる。